◆私の好きな鉄道風景◆ −1−

私の好きな鉄道風景
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五月のある日、私は新潟駅に立っていました。時刻表を眺めながら、ふ と海が見たいと思ったのです。時刻表の最初の方に鉄道の路線図が掲載さ れています。このなかで、海沿いを走っている鉄道に乗ろうと決心し たのには、それほど時間を要しはしませんでした。

その路線は「五能(ごのう)線」。秋田県の東能代(ひがしのしろ)駅から 青森県川部(かわべ)駅までの 長い海沿いの路線です。ちょうどゴールデンウィークということ で、イベント列車が走っていました。その名も「ノスタルジックビュー トレイン」。ヘッドマークには沈む夕日が図案化されています。この ヘッドマークは、五能線から見える日本海に沈む夕日を考慮したも のでしょう。

ノスタルジックビュートレインはゆっくりと東能代駅を出発しました。 弘前(ひろさき)駅まで実に4時間20分かけて各駅に停車しながら進みます。列車 が岩館(いわだて)駅を出ると、ここから青森県です。海岸線すれすれを走る列 車の最後部は眺望ロビーというデッキがあり、潮風を受けることが 出来るわけです。夕日が沈む時間にここを通過すれば、間違いなく感動を呼 び起こすことでしょう。

この辺りから難読駅名が軒を連ねています。「艫作(へなし)」「驫木(とどろき)」 「風合瀬(かそせ)」。どれもこれもロマンティックな名前で す。その風合瀬を過ぎた辺りから空が急に明るくなってきました。風 の関係でこの辺りで天候ががらっと変わることは日常茶飯事だそうです。

鰺ヶ沢(あじがさわ)駅を出ると海岸線に別れを告げます。それに変わって今度は林 檎の樹林を走り抜ける形となって、五所川原(ごしょがわら)駅。ここから津軽鉄道が 分岐しています。津軽鉄道の金木(かなぎ)駅は「太宰治」の生家で ある「斜陽館」があります。さらにその先、「芦野公園(あしのこうえん)駅」 は、桜の枝 が鉄道路線上に張り出しており、いささか「桜のトンネル」という 雰囲気でした。津軽鉄道は、冬場は「ストーブ列車」、夏は「風鈴 列車」、クリスマスの頃には「サンタ列車」として運行していると のことでした。

五能線から奥羽本線に入りますが、川部駅では、おもしろい現象に出会います。 五能線から川部駅に入るとき、列車は青森方面に向かって進 入するのですが、目的地は反対側の弘前駅です。したがって、機関車を付け 替えて進行方向を変更することになるのです。

眺望デッキのところに機関車が付けられ列車は奥羽本線上を走ります。 弘前はもうすぐ。奥羽本線の東能代−弘前間は特急で1時間 半。でも私は、こののどかな五能線をお薦めしたいと思います。

−1−完−
Written By marumi 1999.