◆私の好きな鉄道風景◆ −2−

私の好きな鉄道風景
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八月のある日、私は北海道にいました。根室(ねむろ)へと向かう列車に乗車 していたのです。根室本線は、滝川(たきかわ)から根室までを走っています。しかし、 釧路(くしろ)駅を過ぎてからは、ローカル線そのものという感じです。 札幌(さっぽろ)発の特急 列車も、急行列車も根室までは行きません。さしずめ快速列車が2往復 ほど走っているだけです。

列車というには少し抵抗がありますので、単行(一両の気動車)には、気車と呼 ぶことにしましょう。釧路駅から旧釧路川を渡ると、左手に広大な湿原が 見えてきます。釧路は霧の町という人がいますが、その言葉通りこの辺りへ来ると霧が 視界を遮ってくるようです。門静(もんしず)という駅を通過するころ、 右手に厚岸(あっけし)湾と厚岸湖が見えてきます。対岸には橋が掛け られており、国泰寺があるのだそうです。

糸魚沢(いといざわ)駅を過ぎた頃、気車が急停車しました。駅があるわけでも、入れ 換え(単線区間では信号所というところで行き違いをすることがあ る)でもないようです。「どうしたんだろう?」と思っていると、 車掌さんが車内まで来て大きな声で、「みなさん 右の湿地にタンチョウがいますよ」と叫ぶのです。なんと、この気車はタンチョ ウを見せるために停車したのですよ。

話が変わりますが、「丹頂鶴」という人がいますが、これは正確には誤り ですね。「丹頂」だけで、「鶴」を意味するので「タンチョウ」 と言えばいいんです。ちなみに「丹」は「赤」、「頂」は 「頭のてっぺん」ですから、「タンチョウ」は、頭の赤い鶴とい うことになるんです。

タンチョウを見たことが無い方は、千円札を裏返してみてください。そこ には番いのタンチョウの写真があります。さてどちらが雄でしょうか?。 どちらが雌でしょうか?。実は優雅に見える方が雌なんです。また、真 ん中に楕円の白抜きがあるのにお気づきですか?。これは、タン チョウの卵を意味しているそうです(一万円札にも卵 を意図したものが真ん中にあります)。

話を元に戻します。こうしたタンチョウの里を気車は進んでいきます。浜中 (はまなか)駅から霧多布(きりたっぷ)まで湿原が広がっています。 奇岩絶壁のある湯沸岬も見え隠れ。

日本の最東端という東根室駅を過ぎると、住宅地を迂回して終着駅、根 室です。

霧の中、下りた駅からは、納沙布岬(のさっぷみさき)行きのバスが連絡していました。

−2−完−
Written By marumi 1999.