列車というには少し抵抗がありますので、単行(一両の気動車)には、気車と呼 ぶことにしましょう。釧路駅から旧釧路川を渡ると、左手に広大な湿原が 見えてきます。釧路は霧の町という人がいますが、その言葉通りこの辺りへ来ると霧が 視界を遮ってくるようです。門静(もんしず)という駅を通過するころ、 右手に厚岸(あっけし)湾と厚岸湖が見えてきます。対岸には橋が掛け られており、国泰寺があるのだそうです。
糸魚沢(いといざわ)駅を過ぎた頃、気車が急停車しました。駅があるわけでも、入れ 換え(単線区間では信号所というところで行き違いをすることがあ る)でもないようです。「どうしたんだろう?」と思っていると、 車掌さんが車内まで来て大きな声で、「みなさん 右の湿地にタンチョウがいますよ」と叫ぶのです。なんと、この気車はタンチョ ウを見せるために停車したのですよ。
話が変わりますが、「丹頂鶴」という人がいますが、これは正確には誤り ですね。「丹頂」だけで、「鶴」を意味するので「タンチョウ」 と言えばいいんです。ちなみに「丹」は「赤」、「頂」は 「頭のてっぺん」ですから、「タンチョウ」は、頭の赤い鶴とい うことになるんです。
タンチョウを見たことが無い方は、千円札を裏返してみてください。そこ には番いのタンチョウの写真があります。さてどちらが雄でしょうか?。 どちらが雌でしょうか?。実は優雅に見える方が雌なんです。また、真 ん中に楕円の白抜きがあるのにお気づきですか?。これは、タン チョウの卵を意味しているそうです(一万円札にも卵 を意図したものが真ん中にあります)。
話を元に戻します。こうしたタンチョウの里を気車は進んでいきます。浜中 (はまなか)駅から霧多布(きりたっぷ)まで湿原が広がっています。 奇岩絶壁のある湯沸岬も見え隠れ。
日本の最東端という東根室駅を過ぎると、住宅地を迂回して終着駅、根 室です。
霧の中、下りた駅からは、納沙布岬(のさっぷみさき)行きのバスが連絡していました。