◆私の好きな鉄道風景◆ −4−

私の好きな鉄道風景
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あれは五月のことだったかな。瀬戸大橋が開通して間もない頃、 私は本四備讃線(ほんしびさんせん)の児島(こじま)駅にいました。 ちょうど瀬戸大橋博覧会が開かれ ており、あたりは賑やかでした。しかし私は博覧会を見に来たわ けではなく、ナローゲージ(軽便鉄道)と呼ばれる「下津井電鉄」に乗車するこ とが目的でした。この鉄道には、赤いカウベルを付けた列車や、落書き列車 なるものが運行されているとの情報を入手したから、今回ここを 訪れたのです。

博覧会の会場を後目に、私は下津井電鉄の児島駅を目指しました。 そこは駅とは思えないような装飾が施されていました。思わず「かわいい!」 と叫んでしまうような装飾。列車の到着と発車を知らせるベルはベルツリー で構成されていました。また、屋内には飛行機などの模型が吊るされているような そんな駅舎だったんです。 窓口で鷲羽山(わしゅうざん)駅までの乗車券を購入し、 列車を待っていました。数分後、 列車が近づいてくると、 先のベルツリーが「赤いスイートピー(だったかな?)」を奏でるんですよ。

到着した列車は、普通のそれに比べれば一回りも二回りも小さな列 車でした。前照灯の下には「カウベル」らしきものが付いています。 列車の内部はというと、色とりどりのパイプで構成されたベンチシート がすべて海に面して設置されているんです。その一角に腰を下ろした私は、 吹きさらしの潮風をいっぱいに浴びてまどろんでいました。

鷲羽山駅にはそれほど時間を要さずに到着。ここには落書き列車と して運行されている「赤いクレパス号」が停車していました。あの 俵万智さんもこの列車に落書きをしたのだそうで、探してみましたが いくつもの落書きに埋もれているようで見つけることはできませんでした。 鷲羽山駅から海に向かって山道が通じています。もちろんこの道は鷲羽 山山頂へと続いています。軽装だった私も山頂を目指してこの道を歩き始めました。

20分ほど歩いた頃、目の前に遮る物が無いような感覚を受け たので、一段小高くなったところへ足を運ぶとそこにはベンチが設置し てあります。そして、振り返ると、開通したばかりの雄大な瀬戸大橋 が眼下に見下ろせるじゃないですか。手前の岡山側から対岸の香川方面 まではっきりと、その姿を捕らえることが出来ました。

山頂からの眺めはこれ以上なのかな?。そう思い私は足を運びます。 数分で山頂に到着。山登りと言うにはあまりにも簡単な登頂でした。 そこには周囲の案内をするような石板があり360度のパノラマを 観賞することが出来るようになっています。もちろん眼下にあ の瀬戸大橋の雄姿が見えました。ここから瀬戸大橋を見ていると、人間の 技術の素晴らしさを感ずることができます。素晴らしいとため息が 出るほどでした。

残念ながら下津井電鉄は昨今、廃止となりました。

−4−完−
Written By marumi 1999.