◆私の好きな鉄道風景◆ −9−

私の好きな鉄道風景
−9−


ある年の五月、私は新潟発青森行きの「いなほ3号」に乗車してい ました。午前9時30分ころ新潟を発車して、約6時間強もの時間をか けて青森へと向かいます。隣の席では朝が早いためか、おばさんがすや すやと寝息をたてています。

列車は「遊佐(ゆざ)」という駅を過ぎました。このとき、進行右手に 雄大な鳥海山が見えてきました。まだ山頂付近には残雪があるようです。 ある男性が「あの山はなんという山ですか?」と検札の車掌さん に問い掛けたちょうどそのとき、車内放送で、「皆様、ただいま 右手に見えております山が鳥海山でございます。標高は1237メ ートルあります。今日はよく晴れておりますので、大変美しくご覧 頂けていると思います」と案内されたので、その男性は苦笑いをしながらも 放送を聞いていました。

八郎潟駅を通過する頃、社会の時間に習った「八郎潟干拓地」を確 認しようと窓外に目を向けました。しかし、そこにあったものは、ただ 広い空き地のような物だけでした。実際、干拓地とはそういう物なの かもしれないですね。期待とは違った風景に戸惑いを覚えながらも、 私は見入っていたんです。

新潟で購入した「菊水」のワンカップがあることに気づいた私は、 車窓の風景を肴にして飲み始めました。列車の中でならば、朝からでも 嗜むことができるから嬉しいんですよぉ。(^^;) もちろん、特急列車などの優等列車に限るけれど...。

6本あったカップ酒のうち、半分の3本を空けてしまった頃、列車 は弘前駅を過ぎました。あとわずかで終着青森駅です。考えてみれば ここ青森には何度となく足を運んでいるんですね。しかし、いまだかつてま ともに観光をしたことがありません。いずれ青森県内をゆっくりと林檎を 頬張りながら観光してみたいと思います。

−9−完−
Written By marumi.