◆私の好きな鉄道風景◆ −12−

私の好きな鉄道風景
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今日、大型の時刻表を買ってきました。夏・秋のイベントが所狭しと記述さ れています。それに伴って、イベント列車も各地を走っています。

私は時刻表の最初の頁にある「索引地図」を開いてみました。黒い線や 青い線が縦横に走っています。鉄道に乗りさえすれば、国内のかなり の場所を旅することが出来るわけです。「次はどこへ行こうか」そう考える だけで楽しくなってきます。鉄道を示す線が海沿いにあったなら、潮 の香りを思い浮かべます。逆に山間部を駆け抜けていれば、森の香り を思い浮かべます。

素敵な駅名に、ふと頁を繰る手がとまります。「母恋(ぼこい)」。 室蘭本線にある駅名。「母に恋する」素敵な駅名じゃないですか。そ う考える間もなく、手はその駅の時刻が出ている頁を繰っていました。 各駅停車の列車が一時間に一本あたりの割合で走っています。この数 字の羅列に興ざめしてしまう方もいるでしょうけど私は違っていました。 数字の羅列を見て、その地域の人々の会話が目に浮かんでくるのです。 その地域の文化などが想像できたりもするのです。

大型の時刻表は、私に旅を与えてくれます。1000円足らずで全国各地を 旅する権利を与えてくれるのです。「今度は、ここに行こう」「ここには おいしいものはあるかしら」そう考えるだけで、心は鉄道に乗って そこへ飛び出してしまっています。索引地図の線路に沿って、遙かな る無賃の旅を続けるのです。

「弁」という文字のある駅では駅弁を売っています。主な駅弁なら時 刻表にも書いてあります。「あっ、これ食べたい」と思うと、そこに食 事時に到着するような列車を探して乗車します。乗車すると言っても 時刻表の上でだけだから、手間しかかからないです。

近くに観光地があれば観光ガイドブックと照らし合わせて、そこへ 向かいます。「今日はここに泊まろう」そう考えて、時刻表の最後の頁 に目を移します。時刻表には宿泊ガイドのようなものもついているから。

「明日は、これに乗りたいな」なんて思って、一晩を過ごします。私の 机には必ず「時刻表」「ガイドブック」「全国道路地図」があります。 これだけあれば、空想旅行はできちゃいます。鉄道の旅はできちゃいます。 それもお金をほとんどかけない方法で、全国各地を一瞬で移動できるんです。

私に鉄道の旅を与えてくれる時刻表。旅の始まりである時刻表。私 はこの数字だらけの時刻表を眺めながら各地を空想旅行することが 好きでたまりません。時刻表にも鉄道風景があるんです。

−12−完−
Written By marumi.