◆私の好きな鉄道風景◆ −19−

私の好きな鉄道風景
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私は名古屋から「特急南紀5号」に乗車していました。私はC席、つまり通路 側です。この席に腰をおろそうとすると団体さんのど真ん中でした。 おそらく12名の団体の内、一名分だけをキャンセルしたところに 私が入り込んでしまったのでしょう。「やだなぁ」と思っていたた め、なかなか自席につこうとはしませんでした。

私が外へ缶コーヒーなどを購入しに行き、自席に戻ろうとその方を見つめると、 なにやら団体さんが話をしています。「若い人の方がええか」「いやあの人に 悪いから、代わってあげた方がええんちゃう」。私は内心しめたと思いました。 そこで、「代わりましょうか?」というと「あらま、聞こえとったんやわ」 と私に聞こえないように小声で話す人が居ました。こうして変わった席はD席。 窓際の席です。それも海側という絶好の席交替でした。

南紀5号は紀勢本線の新宮駅までが非電化区間(架線がないのです)なので 気動車列車が活躍しています。途中河原田駅から伊勢鉄道を経由して紀勢本 線へと向かう列車です。現在はほとんどの急行、特急がこの伊勢鉄道を経 由しているようです。名古屋から紀伊半島方面へ向かうには亀山経由より伊 勢鉄道経由の方が9キロも短く所用時間も短いためなんですが、この ような第3セクター鉄道は、珍しいとも言えるんじゃないかしら?。 ちなみに3線が作る三角形から三角線(さんかくせん)と呼んでいるというような ことを聞きかじりました。

私の持つ乗車券では、当初亀山を経由するつもりだったために車内で伊勢鉄道 区間の精算をする必要がありました。車掌さんを呼び止め、乗車券を見せなが ら「この乗車券は伊勢鉄道経由ではないので、その分支払います」といい追加 の440円を差し出しました。

列車が鈴鹿サーキット稲生を出たあたりだったかしら、気動車が急に停車したのです。 ちょうど私の近くにいらっしゃった車掌さんが「あぁ、止まったかぁ」と呟くと 走りながら乗務員室へと駆けていきました。このことで私は「ただの通過 待ちなどじゃないな」と判断したのです。直後、「ただ今軌道内を歩行中 の方がおりましたので緊急停車いたしました。幸い事故は起こりま せんでした」と車内放送がありました。

南紀5号は途中の津駅から紀勢本線に入ります。たった一文字の駅名表示板を 見つめる私。車内では「松阪牛の牛肉弁当の予約受付を行います」と売り子さ んの放送が入りました。私は新幹線車内で小田原で購入した駅弁を食べていた のでここでは見送る事にしました。松阪の牛肉弁当は税込みで1130円だった ようです。午後3時の昼食になるものでしたが結構、量が出ていたようですね。

満員の乗客を乗せたまま、列車は終着駅、紀伊勝浦駅に到着です。

−19−完−
Written By marumi.