この38階にあるレストランへ行き、海側の窓辺に席を確保すると、眼下に 品川駅の全貌が見渡せます。ホームにいると広すぎてわからなかったことが、 手に取るようにわかります。
ここから見ていると、まるで模型でも見ているようなそんな気がします。 ミニチュアの車が横行している道路の向こうにミニチュアの山手線や京浜急行が 横切ります。そのはるか向こうの海岸線に近いところをゆっくりと新幹線が通過 していきます。「あんなところに新幹線が?」いったいどこにいくのでしょう? ビルの合間を抜けながらゆっくりとゆっくりと羽田方面へと向かっていく新幹線。 あとでわかったことですが、羽田方面に新幹線の車庫があると言うようなこと でした。そんなことはつゆ知らず、ひとり騒いでいたのでした。
夕暮れ時、夕焼けに染まった臨海の街の中を一条の光が弧を描いて飛び去って いきます。羽田空港から飛び立った航空機。その弧をまねるようにレインボー ブリッジ内でも一条の光が弧を描き始めました。それが「ゆりかもめ」。 臨海の街がカラフルな色彩を得て、すこしずつ光りだします。臨海の街が 夕焼けの色を羽織って、すこしずつ輝き始めます。
男女のカップルは、押し黙ったまま窓の外を流れる光の競演を眺めています。 あるものは真一文字に、あるものは弧を描き、臨海の街に夜が訪れます。
今まで見えなかった風景が、こうしたビルの上にくると自分に羽が生えたように 色々なものが見えてきます。見方を変えれば、こんなにも違った感覚を受けることが できるのだということを改めて教えてくれます。地上であくせく見ているだけでなく 時にはこうした風景を眺めて、物事の全体を見つめてみるのもいいのかもしれません。
こうしてみると、鉄道だって立派に風景を演出しています。