◆私の好きな鉄道風景◆ −23−

私の好きな鉄道風景
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朝も早いホームに、たった一両だけの気動車が止まってい ます。行き先表示は「静内(しずない)」となっています。 ここは北海道・日高本線の苫小牧(とまこまい)駅。サラブレッドのいる町を 駆け抜ける鉄道です。しかし今朝方から雨が降り始めていました。 車窓から馬の姿を見ることができるかしら...

苫小牧駅から次の勇払(ゆうふつ)駅までは10分以上の駅間があります。 途中6分ほど室蘭本線と並行して走るのですが、その後右にカーブして単 線路を選びます。私の今回の目的地は襟裳岬。この雨では霧のために何 も見えないんじゃないかなという不安がよぎります。

鵡川(むかわ)という駅で、列車の入れ換え(単線のために、上下 線の列車の行き違いをすることらしい)があります。14分も停車するという ので、私は車外に出て思いっきり自然の空気を吸い込んでみました。 ローカル線ならではですよね、こんなに長時間停車するのは。でも こういったのんびりした鉄道に乗っていると気持ちまで穏やかになってくるから 不思議ですよね。鵡川を出ると牧場が車窓に見え隠れします。 雨の中で黙々と下草を食(は)む馬たちが見えます。車外と車内の 温度差で曇る窓をハンカチで拭きながら私は馬を見つめていました。

難読駅名で知られる新冠(にいかっぷ)駅を出ると終着、静内駅です。 ここから先へ行くにはなんと2時間も待たなければならないようです。 私は駅前の観光ハイヤーの運転手さんに「どこでもいいですから、馬がいる 牧場かどこかに連れていってください」といいました。すると運転手さんは 別に臆することなく車を発進させました。たどり着いたところはサラブ レッドなどの資料館でした。ここではいろいろな競争馬の資料が 展示されていたり、ビデオ放映もありました。次に運転手さんは、隣の 牧場の前で車を停止させてくれました。さすがに地元の方ですね。観光 ガイドもしっかりやってくれたのです。

2時間をハイヤーで過ごした私は充実した気分で静内駅へと戻って きました。静内からは約1時間20分ほどで終着駅様似(さまに)駅に 到着です。

ここからJRバスでえりも岬へと向かいます。私の持っている周遊券だと、 このバスにも自由に乗れるんです。「見えなくても、お金払ってないんだ からいいや」っていう感じで岬への道を辿ります。岬は予想通り大荒れで した。でも観光客の姿は大変多かったように思います。各自傘をさしなが らの観光となります。えりも岬で1時間ほどを過ごしたのち、もときた鉄 路を引き返します。今度は、苫小牧駅までの直通。3時間20分の各駅停車 の旅はこたえるものですね。

今日は、このあと札幌へ向かい、そのま ま夜行急行まりも号(現在は、特急おおぞら)の寝台車で釧路へと向かうことにし ていました。体力に不安を感じながらも私は実践することにしたのです。

−23−完−
Written By marumi.