◆私の好きな鉄道風景◆ −26−

私の好きな鉄道風景
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十和田湖付近の一部は秋田県小坂町といいます。東北自動車道の十和田 インターチェンジもあります。大館(おおだて)駅付近からは、十和田湖に向けて、 通称「樹海ライン」という道路が伸びています。この樹海ラインは、 小坂鉄道の小坂(こさか)駅から十和田湖までを呼ぶそうですが、大館駅ま で続いているために、すべてを樹海ラインと呼んでいるようです。

そんな樹海ラインへの入口の駅でもある、小坂鉄道小坂駅。一両だけ の車両が止まっています。この鉄道では、普段見ることが出来ないよ うな物があります。それは「信号機」です。見慣れている信号と言えば 赤や青のランプが灯るものなんですが、ここは「腕木式信号機」という ものを使用しています。地表から垂直に立てられた柱に、赤と白の縞 模様の扇が付けられています。この扇が水平の場合は「赤」。少し下 がった状態が「青」なんだそうです。

「信号よし」という運転士さんの声が客車内に届きました。この列車はワンマ ンカーです。この信号機の事を知らない方たちは、このとき信号とはどれなのかを探すこ とになるかもしれません。小坂駅を出た列車は、東北自動車道に沿っ て北上します。そして大きく左にカーブして樹海ラインに沿います。小さ な駅に丁寧に停車していきます。駅のほとんどが無人となっています。

途中、雪沢温泉駅では、単線の鉄道では珍しくない、上下列車の交 換待ちがあります。この駅には駅員さんがいて、双方の列車から「タブ レット」という安全装置(?)交換を手助けしているようです。前方の腕木式信号機 は、水平を示しています。赤なんですね。下り列車が発車したあと、前方の腕木は先端が微妙に下がりました。運転士さんはそれを指さし、「信号よし」と唱えます。

線路の左手には「長木川」が作り上げた「長木渓流」があります。鍋越 山と鳳凰山に挟まれたところを走ります。どちらも、それほど高くない 山なんですが、鬱蒼とした森の中を走っているので、山があるのかどうか、それが 低いのかどうかなんてわかりません。

大館駅が近づくにつれ、視界がひらけてきました。小坂駅から大館駅ま で40分あまりで走ります。営業キロにして22キロ少しでしょうか。ワンマ ンカ−から地元のおばさんらしき人が、ぞくぞくと降りていきました。 みんな、列車の前方に付けられた運賃箱に整理券と共にお金を投入して いきます。

一日に7往復しかしないこの鉄道。大館と小坂町とをつなぐこの鉄 道は、通学・通勤等の送迎列車として使用されているそうです。 だから、休日ともなると、一日に4往復になってしまいます。小坂 町は製錬会社が多いんですよ。この鉄道も製錬会社のために敷設されたもの なんでしょうね。

この鉄道も昔日、お客さんを乗せての営業は取りやめになってしまったようです。

−26−完−
Written By marumi.