◆私の好きな鉄道風景◆ −52−

私の好きな鉄道風景
−52−


ある日、私は山陰本線を旅していました。朝一番の汽車で下関を出て、 深夜に近い頃に、自宅の有馬に着くようにと考えていました。下関 を出た始発電車は、幡生(はたぶ)という駅で山陽本線と山陰本線 に分岐します。響灘(ひびきなだ)という海岸に沿って北上する形です。 私は長門市(ながとし)駅から、リゾートエクスプレス「フェスタ」という特急に乗る 予定です。それまでは、各駅停車の旅。ふと停車した駅名を見て、 車掌さんの放送とはまったく違う文字にきょとんとしていました。 「特牛」。これで「こっとい」と読むんですよ。始めて来た人だとこの駅名を 正確に読める人なんていないはず。

各駅停車は、長門市駅に到着。ここでフェスタに乗り換えます。 フェスタは、長門市駅を出て益田(ますだ)駅を経由し小郡(おごおり) 駅まで行く列車ですが、私は益田までの乗車です。 で、このフェスタなんだけども、列車の前方を見ると妙におかしいんです。 一見して魚と思えるような「顔」をしているんですよ。 前照燈が目で、そして唇のようになったものがその下にくっついている んです。でもでもそれだけじゃなくて、なんと、その唇はパクパクと動き、 停車中などに「ワタシハフェスタデス」などとしゃべるからおかしい (^^;)。 これこそ、「電車がしゃべってる!」って感じです。

益田駅で、このおかしな電車を降り、特急「おき」に乗り換えます。 これに乗って米子(よなご)まで行き、米子から各駅停車で城崎(きのさき)、 そこから特急「北近畿」で三田へと行く予定だったのだけど、ここで思わぬハプニング が起こったのです。

各駅停車は、餘部(あまるべ)駅で長時間に渡って停車してしまったんです。 今日は突風が吹き荒れていて、宍道湖(しんじこ)もかなり濁っていました。 過去に、餘部鉄橋から回送列車が転落事故を起こしたことがあることを ご存知の方もいらっしゃるかも知れません。このために、JR側としてもかな り気を使っているのでしょう。30分も停車していたでしょうか。 果して、乗り継ぎの特急北近畿には間に合わなくなっていました。 車掌さんは接続してもらえるようにと要請を出していたようですが、 叶わぬ願いでした。三田方面へ行く列車は、この北近畿が最後。 つまり、私は今日中に自宅へ帰れないと言うことになったわけです。 それは大変まずいので、時刻表を取り出し、車掌さんと相談してから香住(かすみ)駅で下車。 駅員さんに掛け合って、特急券はそのままで、後続の、播但線経由大阪 行きの特急「はまかぜ」に乗車させてもらいました。 これで、三ノ宮で下車して迎えにきてもらおうとの考えでした。

特急はまかぜは、姫路(ひめじ)駅で進行方向を変えて、山陽本線を走ります。 三ノ宮で下車したら連絡が来ていないということで冷たい扱いを受けたんですけど、 香住駅の駅員さんの証明をもらっていたことが幸いして15分ほどの問答の後、 無事に開放されました。駅前には、お迎えをお願いしていた弟(当時のアッシーくん) が苛立った顔つきで立っていました。


−52−完−
Written By marumi.