◆私の好きな鉄道風景◆ −53−

私の好きな鉄道風景
−53−



文中「彼女」とあるのは、実は私のことです。こういう目(三人称)で自分のことを 見て書くとまた違って見えますね。


北海道ニューワイド周遊券を所持している彼女は、大沼公園への旅 を計画していました。北海道ニューワイド周遊券だと、特別急行列車の自由 席にも乗車できるんです。彼女は、昨夜見た函館の夜景を目に浮かべつつ 函館の街をあとにします。

13時32分、彼女は特急北斗9号札幌行きに乗車しました。 大沼公園駅まで20分の旅です。北海道には何度か足を運んでいるのですが、 大沼公園駅で下車するのはこれが初めてでした。乗車した特急北斗の自由席は すでに満席で、彼女はしかたなくデッキにたたずむ形となります。 定刻の13時53分、北斗9号は大沼公園駅に到着。 明け方から降り続いていた雨は、ここに来てあがったようです。 小さな駅舎を抜け、大沼湖畔へと向かいます。橋を渡る手前で、 彼女は思わず足を止めました。小さな水掻きのついた足をバタバタさせ て必死に風に逆らって泳いでいる鴨たちがいたのです。 最初は一羽だった鴨も、まるで大沼のすべての鴨の家族が集まったかのよう に盛況となりました。

そんな様子を彼女は微笑みを浮かべて見つめていました。その笑みに応 えるように、鴨たちも一層バタバタと遊ぶのでした。

ちょうど遊覧船が出るというので、彼女は鴨の家族に別れを告げ、 遊覧船乗り場へと急ぎます。乗船券を購入し乗船。曇り空のもと、 ゆっくりと大沼・小沼を巡るコースです。 駒ヶ岳のガイドがあったんだけど、山はすっかり雲に隠されていて 少し残念に思った彼女でした。でも、ゆったりした旅にはこうした 天候が似合うのかもしれないなぁと妙な納得をしていたようです。

鹿園というのもあったようだけど、特急の時間も迫っていたので、 元来た道を駅に向かって歩き始めました。時刻表を見ると、 次の函館行きは北斗10号。約4分遅れて16時17分に北斗10号が到着。 函館駅に到着したときには、すでに17時を過ぎていました。

彼女は、これから急行はまなすに乗車して札幌へ向かう予定です。 はまなすの函館発は午前2時。それまでは、もう一度函館山に登ったり、 朝市で試食したらおいしかった塩辛を肴に軽くお酒でも飲んでみようかな、 と思っていました。


−53−完−
Written By marumi.