◆私の好きな鉄道風景◆ −58−

私の好きな鉄道風景
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江の電クッション


藤沢駅,江ノ島駅,長谷寺で売られている江の電クッション


ビルの中にぽつんと停車しているグリーンの車両。先頭車両の向こう側は まるでジェットコースターを思わせるような急勾配。東海道本線、小田急電鉄との 接続駅である藤沢をゆっくりと電車が発車します。

石上(いしがみ)駅まで一気に坂を下ると道路と道路の間を単線路が 縫うように走ります。柳小路(やなぎこうじ)駅も片面のホームで無人です。 電車の横の道路を自転車が追い越していきました。のどかな雰囲気で走り出した この路線は、神奈川県藤沢市と鎌倉市を江ノ島を経由して結ぶ「江ノ島電鉄 (通称江ノ電)」です。次の鵠沼(くげぬま)駅でようやく双方向の電車が 行き違います。鵠沼というところは一口に言えば東京の田園調布、兵庫の芦屋に 匹敵するほどの豪邸もあるところです。そろそろ海岸も見えてくる頃かな。

鵠沼を出ると進行右手に海と江ノ島の姿がちらちらと見えるようになります。 江ノ島駅は海からちょっと離れているものの夏にはものすごくにぎわうところです。 江ノ島駅から海に出るまでの間にある商店街にはスマートボールの店とか射的の店が ならび懐かしい雰囲気をかもしだしています。

鉄道ファンならずとも、江ノ島駅から次の腰越(こしごえ)駅までの間は 興味を覚えることでしょう。今ではもう少なくなってしまっている、 道路と鉄道の併用区間(併用軌道)があるんです。そうそう市電みたいな感じ。 江ノ島駅を出ると電車は竜口寺の門前に出るようなかたちで、道路へと出ます。 ちょうどこのあたりの進行右手に「江ノ電最中(モナカ)」のお店があるんですよ。 でも早い時間に並ばないといつでも売り切れですけど。

電車が走る部分は黄色い色で塗り分けられています。竜口寺前の江ノ電のなかで もっとも急といわれるカーブを右に曲がると、腰越の商店街です。 商店街中はまっすぐなんだけど道幅はものすごくせまくて、両端に追いやられた 車があえぎながら走っていきます。ちょっとでも車がはみ出していると もう電車と車の渋滞の始まりです。そのうちこの渋滞が原因で廃止になっちゃう のかなぁ。商店街を抜け、ほっとしたように専用軌道に入って腰越駅に到着です。 運転士さんがもっとも気を使う区間なんだそうです。

次は鎌倉高校前駅。この駅の鎌倉寄りの空き地からホームの方に向けてカメラを 構えるととってもいい構図の写真が撮れるんじゃないかしら。江ノ電の小さな 車両の向こうに江ノ島がでーんと見えるんです。夕焼けの頃だったら本当に きれいなんじゃないかな。鎌倉高校前駅と七里ヶ浜(しちりがはま)駅の間に ひときわ窮屈な場所があります。なにも、こんなところですれ違わなくても...。 と思うような場所を通過して、七里ヶ浜駅。この次の稲村ヶ崎(いなむらがさき)駅 は映画「稲村ジェーン」でおなじみになりました。そして 「俺たちの旅(オッス<勝野洋>、チューちゃん<小倉一郎>、カーコ<長谷直美>の三人 が一緒の部屋に同居するという、いまではすぐ俗物になりそうな当時ならではの 青春もの)」の舞台となった極楽寺(ごくらくじ)駅。ここは6月になると紫陽花が いっぱい咲くところです。

鎌倉大仏のある長谷(はせ)駅、サザンオールスターズの歌にもある 由比ヶ浜(ゆいがはま)駅、和田塚(わだつか)駅を過ぎると古都鎌倉駅に到着です。

民家の軒先をかすめるように走る電車、せまい路地を駆け抜ける電車、車とやりあい ながら走る電車をぜひ一度は見に来てあげてくださいな。


−58−完−
Written By marumi.