◆私の好きな鉄道風景◆ −厚東さんの寄稿−

私の好きな鉄道風景
−厚東さんの寄稿−



池北(ちほく)線・上常呂(かみところ)駅

北海道池北高原鉄道の北見寄りに上常呂という小駅がある。ここはまだ北見市内であ るが特に目立った観光地もないし特徴的な風景もない平凡な田舎の駅である。

しかし私にとっては忘れられない駅である。 というのはもう10年以上前の夏、私が大学生の時に北海道を鉄道で巡っていたのだが、 生まれて初めて野宿をしたのがこの駅だからだ。 その時は友人と二人だったのだが、こぎれいな駅舎もあるし、周囲の人通りも 閑散としているのでなかなか良さそうだと車窓から判断し飛び降りたのだった。

しかしその駅には駅員さんがいて、終列車が行ってしまうやいなや駅舎の鍵を 閉めてしまったのだ。仕方がないので駅前の農協の駐車場で寝た。 すると朝の5時頃散歩をしていたおばあさんに、 朝御飯でも食べて行きなさいと声をかけられ、悪いなあと思いつつおばあさんの家 でごちそうになりその上お昼の弁当まで作っていただいたのであった。

私も死ぬまでに一度くらいは野宿をする若者に朝飯でもおごってやろうと思って いる。


まるみ感想:旅先での心優しい対応をしてくださる方に出会うと、どんなにつらい行程 だったとしても、それが全部吹き飛んでしまうくらい楽しい気持ちになれますよね。 そういった経験を持っている方は、きっと優しい心を持って旅をしていくんじゃない かなぁと思います。

山陽本線・厚東(ことう)駅

山陽本線の小郡の近くに厚東という駅があるのだが実は私の姓は厚東なのだ。

それで小学生の頃からこの駅には大きな関心を寄せてきた。 それから20年もたったある日 私は九州旅行の帰りについに厚東駅に立ち寄ったのである。駅に降りたのは私を含め 2−3人である。

田舎の静かな駅なのだが、けしからん事に真上を山陽新幹線が走っ ているではないか。駅はその高架の下で小さくなっているかのようだ。しかし有人駅 だったので少しうれしい。 入場券を求めると硬券であった。厚東駅と印刷してある。

そんなこと当たり前だがこの切符に限っては嘘のように感じる。駅から少し歩くと厚 東郵便局があり、近くには厚東川も流れている。私はここ厚東では王様である。 私は異常な興奮を覚え駅周辺をうろうろした。誰か私に声をかけて名前を聞いてくれ ないものかと思ったがそんな人はいるわけはない。

新幹線以外は静かで人通りの少な い厚東を堪能した私は記念の入場券をカバンに大切にしまって家路についたのだった。


まるみ感想:自分の名前と同じ駅名があると、行ってみたくなるものですよね。 町中全部が自分の名前。車掌さんが「次は厚東!厚東!」とアナウンスすると 自分が呼ばれたような気がして、はっとするような感覚なのかも知れないですね。 国鉄全線を踏破したという方の中には、その到達地点を自分の名前と同じ駅で... ということをした人もいらっしゃるようです。

Written By 厚東 隆.