◆私の好きな鉄道風景◆ −沖波路順風さんの寄稿−

私の好きな鉄道風景
−沖波路順風さんの寄稿−



★ 私の寝台特急みずほ体験記

平成5年東海道ブルトレから食堂車が消え、翌年には東海道の看板列車が消えた。 国鉄からのフ ァンにとっては悲しい出来事であった。私は乗り納めのため、最後の8月を迎えた下 り「みずほ」に乗った。

工事で狭い東京駅9番線のたたずまいは、優等列車のホームにはふさわしくない。向 かいのホームから、こちらの写真を撮る人がいる。やはり惜別なのだろうか。

さて、私は2号車に乗車。幼い頃「さくら」に乗って以来10年ぶりのオロネ(A寝台) は、シートモケットは張り替えられていたが、老朽化の色は隠せなかった。それから、下関車掌区 特製「みずほTシャツ」は売り切れだった。 横浜を出て、食堂売店車に行くと、夏休みもあってか日食氏は2人乗務で、7時でも 売店の営業をしていた。ビールとたこ焼きを注文し席に着く。食堂車内は女子高の先 生たちも席に着き、そのにぎやかさは、過去の食堂車のようでとてもうれしかった。

ほろ酔いの大船駅では臨時停車。先行貨物列車が沼津で脱線したらしく、私は運行中 止をとても心配した。結局列車は4時間遅れで熊本へ着くことになった。 でも、おかげで4時間も長く乗れたし、朝食も昼食も食堂車でとることができた。ま た、寝台セットも急きょ車掌さんがやることになり、伝説の車掌補復活をも見ること ができたのである。

そして終点熊本駅。回送で引き上げる車掌さんが、私を乗り納め客と思ったらしく、 窓から挙手の礼をして去っていった。私は頭を下げてみずほを見送った。

素晴らしい思い出をくれたみずほ。本当にありがとう。彼女はもういないが、これ こそ心の中でいつまでも走り続ける列車なのだろう。



Written By 沖波路順風

まるみ感想:私もこの「みずほ」には乗りに行きました。スピード化優先の時代に なってしまって、速ければ速いほどいいというような感覚が出てきているような気が して、すこし残念に思っています。夜行寝台車にしかない独特な雰囲気、なんとなく 贅沢な気持ちになれる寝台車って好きです。